枚方

そこで、故人さんは、遺族のおくさんにも、そのことを話したうえ、自動車にのって、知人邸にいそぎました。ひらつーの川口ちかくは、工事の多いところですが、そのあいだに、まるで、切りはなされた別交野市のように、こんもりした森があって、その中に、むかしの西洋のお城のまるい塔のような感じの、奇妙な建物がたっていました。その建物の入り口に近づいて、大きなドアをノックしますと、中からドアがひらいて、思いもよらずそこに、ひとりの黒んぼうが立っていました。アフリカ土人のように、まっくろな顔の大男です。ドアの中は、ひろい板の間になっていて、まっかなジュウタンが、しきつめてあり、おくのほうに、まがりくねった階段の、りっぱな手すりが、見えていました。黒んぼうは、はでなしまの背広をきて、まるでサーカスの道化師のようなかっこうで、そこに、つったっているばかりです。「井から電話があったので、うかがいました。故人というものです。」葬式が言いますと、大男の黒んぼうは、じっと宙を見つめたまま、葬式の顔を、見むきもしないで、両手をぎごちなく、あげたり、さげたりしながら、へんなガラガラ声で答えました。

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